シネマコリアの代表が、韓国映画と格闘する日々をつづります


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『懐かしの庭』の「癒し」 ~藤本さんからの年賀メールより

 印象的な年賀メールをいただきましたので、ご本人に転載の許諾をいただいたうえで、掲載させていただきます。

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 西村(ソチョン)様

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 昨年、やっとお会いすることができました。ハングルをPCで扱う方法についてメールでアドバイスをいただいてから十年以上もたってしまいましたが、これを機会に改めていろいろと交流させていただければと思っております。

 昨年の夏にイイノホールで拝見した『懐かしの庭』ですが、日本国内での上映の予定などはたっていないのでしょうか。見せたい友人が大勢います。

 監督の舞台挨拶にあった「癒し」という言葉が最初は意外でしたが、映画を見ながら、なるほどと思っておりました。1980年光州事件を生き延びてしまった人たちの苦しみに改めて気付かせてもらった気がします。あの激烈な闘争で生き残った人たちは、死んでいった友人、恋人、同志たちに「申し訳けない」という気持ちを持ち続け、それゆえ闘争方針も過激化していきます。自分も身に覚えがあります。自分の行動を理性的なものと考えているのですが、それを支えているのは結構このような情念であったりします。あんな風に「あなたそれでいいの」(ハン・ユニ)といってくれる人が側にいたらどれだけ気持ちが楽になるか。あれは、韓国の386世代の人達に必要な「癒し」というか、思考停止を解く魔法の言葉ではないかと思った次第です。

 立場を表明することが行為として非常に重要な意味を持つこともあれば、現実に指一本ふれない思考停止でしかないこともあると思います。地元での同窓会(?)の酒宴のトイレのシーンで、「先輩の政治的立場はどちらですか」と聞かれてオ・ヒョヌが「....」と応対する場面も印象に残っています。

 あの後、学生を連れて光州に行ってきました。光州にある東新大学が勤め先の作新学院大学と姉妹校提携を結んでおりまして、前期に交換留学で来ていた学生たちに会うのと、こちらから学生を送る下準備の目的もありました。留学していた学生たちは、光州を闘った世代の息子や娘たちです。親世代の闘争に誇りを持っていると同時に、意外なまでに気負いはありませんでした。慰霊碑に参拝するときに、韓国の学生諸君が「で、なんといってお参りする?」「ありがとうございます、じゃないの」「そうだね」というやりとりがありました。そのあと、彼らは結構長い時間、目を閉じて祈っていたのが印象に残っています。運動圏の光州詣でとはまた違った面を見せてもらいました。

 私と同世代の教員たちは、ある者はあの時徴兵され軍におり、ある者は獄中におり、で生き延びた人達です。軍の側であの時代を生き延びてしまった人達のその後も今後テーマになっていくのでしょうか。『ペパーミント・キャンディー』はその一つだったのだと思います。あの映画の時もメールをさし上げたと思いますが、一週間くらい沈みこんでいた記憶があります。

 日本でも特攻隊の生き残りの乱心、また全共闘運動敗北の後、運動の「周辺部分」にいた人達の「まじめな」出世拒否など、同じような現象があると思ってます。そういうメンタリティを非理性的なものとして片付けるわけにはいかず、さりとて過去は過去とお気楽に生きるわけにもいかず、本当に苦しいものです。ですが、自分自身の歴史(人生?)を整理する意味も含めて、このテーマ、少し丁寧に追いかけてみようかなと思い始めています。

 映画の後、中島みゆきの『時代』を初めて聞いた時の感覚に似たものを感じていたようです。

 韓国では江南のシネマコンプレックスで『華麗なる休暇』を見てきました。あれの日本での上映計画はあるのでしょうか。光州の国立墓地、慰霊碑に参拝した私のゼミの学生は、正視できないと思うと言って、一緒には見なかったのですが、国内で上映されるならそれまでに心の準備をしておくと言ってました。動きなどご存知でしたらお教えください。

 そんなこんなで、韓国との距離が少し縮まる一年でした。

 今年も良い作品のご紹介、期待しております。
 本年もよろしくお願いいたします。

作新学院大学 人間文化学部
藤本一男

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<ソチョン補足>

 文中にある『懐かしの庭』は『なつかしの庭』というタイトルで3/1よりシネマート六本木で始まる韓流シネマ・フェスティバル2008春(http://www.cinemart.co.jp/han-fes2008/)で公開されます。『華麗なる休暇』は『光州5・18』(http://www.xn--518-ps4b.jp/)というタイトルで、5月に劇場公開予定です。
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by seochon | 2008-01-17 20:54