シネマコリアの代表が、韓国映画と格闘する日々をつづります


by seochon
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不親切なチャヌクさん

 韓国で2005年末に出版された『パク・チャヌクのモンタージュ』という本の邦訳の校正を始める。評論家でもあるパク・チャヌク自身のエッセイと、『JSA』+復讐三部作を中心とした製作日誌・インタビューからなる300頁ほどの書籍。先日、別件で出版社に電話をしたら、その電話口で訳文のチェックを依頼された。映画の本なので、専門用語や人物名・作品名など固有名詞が多い、特に外国映画は、英題、韓国題、邦題、それぞれに違うケースがあるので、そこを重点的にやって欲しいと。

 300頁ならすぐ終わるだろうと安請け合いしたは良いけれど、さすがに才人パク・チャヌク。映画も書籍も音楽も、ありとあらゆる分野に造詣が深く、故にチェックもなかなか時間がかかる。用語のチェックだけとはいえ、当方、韓国語もある程度はできてしまうものだから、訳が気になる部分は原書をざっと読む。字幕チェックの時の癖で、むずがゆい日本語があると、ついつい赤入れしたくなったりもする。

 内容はなかなか興味深い。韓国を代表する監督の頭脳がどのように動いているのかが垣間見られる。親交のあるスンワン&スンボム・ブラザース、ミンシク&ジテなどとの交友録的な部分もあり、そう言った意味での資料的価値もある。

 読んでいて、あっそうか!と思ったのは、彼が大学で哲学を勉強していたという部分。ちょうど、アップしたてのカツヲうどんさんのレビュー(本文はこちら)によると、今秋公開される『サイボーグでも大丈夫』は、「客観と主観の絶対的真理を巡る葛藤」「個人の主観が物理事象を変えうる、という量子力学ネタを加味したような内容」だそう。哲学的・観念的な色彩が色濃く出ている作品のようですが、この『パク・チャヌクのモンタージュ』のエッセイの中にも「非常識」が「常識」化していく様が描かれたチャヌク作の寓話が紹介されていたりで、『サイボーグ』&チャヌク理解には欠かせない一冊になりそう。日本ではどうしても復讐シリーズのイメージが強いですが、もっと守備範囲の広い人物であることもよく分かります。

 ところで、この『パク・チャヌクのモンタージュ』には、『パク・チャヌクのオマージュ』という姉妹本があります。こちらはパク・チャヌクが映画監督になる前、評論家として活動していた頃に出した本『映画を見ることの隠密な魅力』(1994)の改訂増補版。日本では『サイボーグ』の公開にあわせてひとまず『モンタージュ』だけが出版されますが、売れ行きが良ければ『オマージュ』も、となるかも知れませんね。(^^

  『キム・ギドクの世界 野生もしくは贖罪の山羊』に続く作家本。『サイボーグ』の公開は9月ですが、諸々の仕込みは静かに着々と進行中なのでございます。
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by seochon | 2007-05-28 02:59