シネマコリアの代表が、韓国映画と格闘する日々をつづります


by seochon
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字幕の話し(1)~大事なのは日本語

 日曜日の朝刊、書評欄で、気になる本を発見。さっそくamazonでポチッと注文。恐ろしいことにその日の内に発送され、月曜日には宅急便で到着してしまった。翌火曜日、通勤電車の中で読む。内容の面白さもさることながら、読みやすい文章であっという間に読了。本の存在を知ってから読み終わるまで3日とかからず。Time is money. 時は金なり。パルリパルリ。ほほっほー(意味のない雄叫び)

 発送が早いには訳がある。初版第一刷が2/20、第二刷が3/15。かなり売れている本。書籍データは以下の通り。

『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』
 太田直子 2007年 光文社新書

 映画ファンなら、この方の名前を見ればぴーんと来るはず。字幕翻訳家の太田直子氏が字幕翻訳を通して感じた日本語エトセトラ。読みやすいには訳がある。普段から限られた文字数に最大限の情報量を盛り込み、無駄な日本語を一切使わない字幕を作っている方なので、文章がリズミカルかつ歯切れが良いのだ。字幕の話しもあるけれど、日本語の話しがメインといっても過言ではない。ほとんどの方は、字幕翻訳家=外国語に堪能と考えているでしょうけど、それは一面正解、一面不正解。字幕翻訳家にとって一番大事な能力はなんといっても日本語。

 韓国映画の字幕を作る方法には4つある。

(1)韓国語を、韓国語の字幕翻訳家が翻訳
(2)韓国側が準備した英語字幕を元に、英語の字幕翻訳家が翻訳
(3)(2)を韓国語に詳しい人物に監修してもらう
(4)韓国語の翻訳家が日本語に全訳し、その日本語を元に(太田氏の用法を借りると)字幕屋が文字数を刈り込む

 ほとんどは(1)、ときどき(2)(3)があるというのが現状だけれど、(4)の方法を取れば字幕屋に外国語の能力は全く必要ないことが分かるだろう。韓国映画ではないけれど、(4)の方法で最終的に詩人に字幕を作ってもらったケースもあると聞く。これはなかなかチャレンジングかつ有効な方法かも知れない。どちらも、限られた文字数の中により多くの情報を適切な日本語を使って表現する、読者に行間を読ませる文章を書く仕事だからだ。実際には費用も時間もかかるので(4)の方法はほとんど使われることがない。よって、字幕翻訳家=外国語に堪能というイメージが作られるわけだけれど、究極的には、字幕作成に必要なのは日本語の能力であって外国語の能力ではない。暴論かも知れないけれど、ハングル検定3級程度の能力があれば、あとはやる気の問題で誰でも字幕翻訳はできると思う(ぎゃー、全国の韓国語字幕翻訳家を敵に回したかも^^;)。とはいえ、字幕ほど日本語のセンスの差が出る物もない。翻訳が出来るのと、それが商品としての価値を持つというのはまた別の話(と、さっそくフォロー)。

 そんなわけで、太田直子氏の本が字幕の本というより、日本語の本になっているのはとても理にかなっている。内容は、句読点の使い方、「!?」マークの使い方、ルビの使い方、言葉遣いの使い分け、禁止用語の取り扱い、クライアントの配給会社とのやり取り、などなど。読んでいてふみふみと納得するところ多し。シネマコリアも字幕翻訳家からするとクライアントなので、たらーりと冷や汗を流す箇所も。ぶっちゃけな裏話もかなり多い。この本、読んで一番楽しめるのは恐らく字幕翻訳家ですネ。がっはっはっと笑う箇所あり、そーそーそー!と同業者として怒りを共有するところあり、なはずです。


 帰宅してメールをチェックすると、シネマコリアでいつも字幕制作をお願いしている会社の社長から「求人告知をお願いしたいのだけれど」との連絡あり。これは字幕の神様が私を呼んでいるねと直感(ただの勘違い)。以前から機会があったら書こうと思っていた字幕についてのエトセトラをブログで書こうと思い立つ。

 というわけで、連載物のタイトルにしてみました。多分、不定期に書きます。
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by seochon | 2007-04-25 02:26