シネマコリアの代表が、韓国映画と格闘する日々をつづります


by seochon
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権利切れ作品・復活大作戦

 メールで問い合わせがありました。

 現在、シネマート六本木で開催されている「韓流祭」。『情事』のリクエストが多かったのだが、「権利切れのため上映できません」とHPに掲載されている。どうしても『情事』をスクリーンで観たい。どうすれば見られるようになるのか? 手がかりだけでも教えて欲しい、と。

 メールでの問い合わせですが、同じようなことを考えている方がいらっしゃるかも知れませんので、ブログにてお返事します。


 まず基本的なお話しから。

 映画は権利の固まりです。なんらかの形で権利を保有していなければ上映はできません。たとえ目の前にフィルムがあっても、上映する権利を持っていなければ、それは上映することは出来ません。インターネットを検索すれば映画のスチール写真がごろごろ転がってますが、それらを権利元に無許可で勝手に使うことは出来ません(個人で楽しむのは自由です)。

 韓国映画の権利は、日本の配給会社が5年、7年、10年といった期限付きで韓国の配給会社・製作会社・海外セールス会社などの権利元から購入します。期限内であれば、その映画は日本の配給会社の判断で、自由に日本国内で上映できます。DVDも発売できます。TVで放送することも出来ます。スチール写真なども自由に使用することが出来ます。契約期限が来ると、日本の配給会社はその契約を延長するかどうかの判断をします。延長する場合は、再度韓国の権利元と協議し追加の権利料を支払います。しかし、延長しない場合も当然あります。延長しなかった場合、当初の契約期間が満了すると、その映画はもう日本国内で上映できなくなります。DVDも絶版となり売れ残りは回収しなければなりません。TV放送もできませんし、誰かから写真を掲載したいので提供してくれ、と言われても権利がないのでできません。これが、いわゆる「権利切れ」という現象です。

 今年、こんなことがありました。

 韓国映画レビュー本の出版を計画している出版社からのメールでの問い合わせでした。いわく、『美術館の隣の動物園』のDVDジャケ写を掲載したいのだが、発売元から提供を断られてしまった。このままだと最悪、本が出版できなくなる。なんとなりませんか? 写真一枚で出版できなくなるなんて大げさでは?と思われるかも知れませんが、こういうことはあり得ます。もちろん担当者は写真なしでも出版したいと思っていますが、最終的な判断をするのは出版社の上層部。写真が掲載できないがために、出版がストップすることだってあるのです。時々、映画のワンシーンや俳優の顔を「絵」で描いている本を見かけますが、これは何らかの理由で写真を掲載することが出来ず、苦肉の策として「絵」で代用しているのです。

 さて、『美術館の隣の動物園』。この作品の日本公開は2000年。そろそろ権利切れになってる可能性があるなあ、と配給会社の社長に問い合わせてみると、はたしてBINGO! ただ、その会社の社長さんは有能かつとても親切な方で、そういうことなら、と『美術館~』の製作会社に連絡を取って、写真掲載オーケーの許諾をとってくださいました。韓国の権利元から許可が出たので、その配給会社に保存されていた『美術館~』のスチール写真が出版社に提供され、ぶじ写真は本に掲載されることになりました(まだ出版はされてません)。


 この例でだいたいのことはお分かりいただけるでしょうか?

 権利切れの作品については、日本国内に権利を持っている会社がないので、韓国の権利元と交渉することになります。写真とフィルムという違いはありますが、基本的には同じように処理していくことになります。異なるのは、フィルムで上映するという作業はとてもお金がかかるので、実施する上でより難易度が高くなるということ。あと、重要なポイントは、元々権利を持っていた日本の配給会社が全面的に協力してくれるのか(してくれないことも当然あります)、また日本語字幕の入ったフィルムが日本国内に残っているかどうかです。

 『情事』をもう一度、日本で上映したいのならば、韓国の権利元と交渉する必要があります。映画祭で数回上映し、その数回分の上映に対して韓国側に料金を支払うという方法もありますし、思い切って上映権そのものを購入してしまうというのもひとつの手です。もし、今後何回でも上映したいのなら、上映権を購入してしまった方がよいでしょう。『情事』は1998年の作品ですので、上映権を買ったとてそれほど高い値段ではないと思います。自分の好きな作品のオーナーになるというのはなかなか夢のある話しです。ちなみに、映画の権利は個人でも買えますし、実際にそうしている人は何人もいます。

 権利関係をクリアにし、上映することが可能になったとしましょう。次に重要なのは日本語字幕付きのフィルムです。フィルムがなければ権利を持っていても上映できません。もし、『情事』の日本語字幕付きのフィルムが現存しているのならば、それを日本の配給会社から借りるのがよいでしょう。ただし、通常映画のフィルムは権利切れになると破棄するのが普通です。なので、もう「ない」可能性のほうが高いです。また、仮に残っていたとしても痛んでしまって上映に耐えうるクオリティではないかも知れません。

 フィルムが残っていない、または上映に耐えうる状態ではない場合は、日本語字幕付きのフィルムを作らなければなりません。韓国でニュープリントを焼いてもらって、日本に輸入し、更に字幕を打ち込む作業が必要になります。やり方にもよりますが、ざっと50~100万円の追加出費を覚悟した方がよいでしょう。

 上映する権利を手中に収め、かつ上映用のフィルムを確保できたなら、やっと実際に上映することが可能になります。ただし、映画館で上映するにせよ、映画祭・上映会で上映するにせよ、上映するという作業そのものにもまた別途コストがかかることをお忘れなく。

 基本的なお話しは以上です。

 まずは、『情事』を配給していた会社に連絡を取るのが第一です。そこを通さなくても上映に向けての作業を進めることは可能ですが、元々の配給会社の協力を得た方が何かと話しがスムースなはずです。連絡を取る際、絶対に確認すべきは以下の3点です。

1.韓国の権利元の連絡先
2.日本語字幕付きフィルムは残っているかどうか
3.上映権を自前で確保したら、そのフィルムを貸してもらえるかどうか

 他にも、どういう経緯で権利を延長しなかったのかも話の種として伺っておくとよいかと思います。簡単にいえば、『情事』にはもう需要がないと判断してのことと思いますが、まだまだ需要はあり十分商売になる、ということを説得できれば、その会社が改めて権利を延長し再度配給してくれることも「ない」とは言えません(ただし可能性は限りなくゼロに近いでしょう)。

 まもなく公開される話題作『バベル』。ろう者がエキストラとして参加したこの作品は、署名運動によって日本語の台詞にも字幕が入る形で劇場公開されます。『情事』の配給会社は『バベル』と同じところです。

 映画の上映には様々な困難がつきまといますが、一番大事なのは、何があっても絶対上映するんだという強い思いです。これは十分条件ではありませんが絶対必要条件です。
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by seochon | 2007-04-14 23:08