シネマコリアの代表が、韓国映画と格闘する日々をつづります


by seochon
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ネパール映画は第二の韓国映画になるのか?

 ネパールの友人が母国映画を日本公開すべく奔走していますので、ご紹介します。

 友人の名前はサキャ アノジュさん。このブログで2008年に「ネパールからナマステ」という記事を書きましたが、ここで紹介しているネパール人がサキャさんです。

 サキャさんは、6年ほど仕事で愛知県に住んだことがあり、日本語が堪能。帰国後は、ネパールで日本語学校を経営するほか、日本の『家なき子』や韓国の「冬のソナタ」をネパールで配給しています。その後も日本、韓国、中国、東南・南アジア諸国を飛び回り、世界の映像作品をネパールに紹介すべく頑張ってらっしゃいます。ネパールは地理的に近いこともあり、外国映画といえばインド映画。インド以外の外国映画をネパールで配給しているのはサキャさんくらいのものだそうです。

 そんなサキャさんが、今度は逆にネパールの映画を日本に紹介する事業を始めました。記念すべき第一作は『道端の花』(2010年)。ネパールのカースト制度を背景にしたラブストーリーです。

■ネパール映画『道端の花』公式サイト(Asia Friendship Association)
 http://www.anoj.jp/

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 先日、東京国際映画祭で上京した折、サキャさんにも会って色々話を聞いてきました。『道端の花』は日本語字幕を入れて、在京の配給会社を集めての試写会がちょうど終わったところでした。今のところ、全国公開を引き受けてくれる会社は現れていないとのことでしたので、まずは有名な映画祭に出品してはどうか?とアジア映画の紹介に力を入れている映画祭をいくつか紹介させていただきました。映画祭で上映されて、観客の好評を得ることが出来れば、それが口コミで広がって劇場公開につながることがありますので。さっそく今春開催されるコンペ部門のある映画祭に一件応募されたそうですが、それと平行して東京でショーケース的に上映会が開かれることになりました。

■ネパール映画『道端の花』上映
 1/28(土)16:00/19:00@アップリンクファクトリー
 前売 1,500円/当日 2,000円
 http://www.uplink.co.jp/factory/log/004238.php

 私もネパール映画については詳しく知らないのですが、外国との合作や外国人監督作ではない、純粋なネパール映画が日本で上映されるのはかなり珍しいことですし、劇場公開となるとひょっとしたら日本初かも知れません。

 『道端の花』は、恋あり、アクションあり、ミュージカルシーンありのマサラ・ムービー。とはいえ、インド映画のそれとはちょっと違って、映画を通じて社会を変えていこうという意思が感じられる“社会派エンターテイメント”です。昨年、韓国で、ろう学校で起こった性暴力事件を映画化した『トガニ/るつぼ』が公開されるや、学校に対する再捜査、当該校の廃校、障害者に対する性犯罪防止策が検討されるなど、映画をきっかけとして社会が変わっていくというコリアン・ダイナミズムが起こり、話題になりましたが、ネパールでも『道端の花』で描かれていたカースト制度が、今後どのように変わっていくのか、それとも変わらないのか気になるところです。また、ハリウッド式ハッピーエンドではなく、ラストはかなり驚きの悲劇的な結末。。。そんなところも韓国映画にちょっと近いテイストがあるかも知れません。


 ネパール映画について気になったので、調べてみると、いやーあるもんですね。ネパール映画を研究するだけでなく、製作までされている日本人がいらっしゃいました。

■ネパール映画研究のページ
 http://www.rsch.tuis.ac.jp/~ito/nepali_films/

 このサイトの運営者が執筆した書籍もちょうど出版されたところです。

■『ネパール映画の全貌 その歴史と分析』伊藤敏朗、凱風社、2011年10月刊行
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4773636017/cinemakoreane-22

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 このサイトによると・・・

 2008年、ネパールはその国家統一以来、240年間の長きにわたった王政に幕をおろし、伝統社会の変容、経済規模の拡大、ディジタル情報化の浸透などが同時に進む錯綜した状況の渦中に
あり、

 新たな映画スタジオの建設、新しい映画祭やワークショップの開催、ディジタル・シネマの製作やその配給網の確立、南アジアでは初めてとなる大学卒業資格の得られる映画学部の開設、少数民族映画の制作活動の活発化など、多様な取り組みが、一斉に開始されて
いるそうです。これって、「王政」を「軍政」に変えると、1990年代の韓国とそっくりですね。さらに

 民主化以前のネパール映画は、国家による甚大な関与が特徴であり、表現の自由の抑圧のもと、ネパール映画は社会性に乏しく大衆娯楽的要素の詰め込まれた「マサラ・ムービー」の様式に占められた。
 また、

 (ネパールで)「ネパール映画と外国映画のどちらをより好むか?」と訊ねたところ、ネパール映画よりも外国映画を好むという人が66.6%、ネパール映画を好むという人は26.5%であった。
といった記述も1990年代末から始まる韓国映画ルネサンス以前の韓国との共通点を感じざるを得ません。

 ついでに言えば、日本で最初に出版された本格的な韓国映画研究書は『韓国映画入門』(李英一+佐藤忠男、1990年、絶版)ですが、これも出版社は前述の『ネパール映画の全貌 その歴史と分析』と同じ凱風社です。。。


 諸々総合的に考えると、

 ネパールでは長く続いた王政時代、表現の自由が制限されていたためノーテンキなマサラ・ムービーばかりが製作されていたが、クオリティが低く、大衆の支持を得ることができなかった。それが近年民主化され、表現の自由を獲得し、社会的な視点を持ったエンターテイメントが生まれ始めている。加えて、スタジオや映画祭、映画学校をはじめとする教育なども充実してきている・・・

 というように読めます。ってことは、このタイミングで日本公開される『道端の花』は、『シュリ』に相当するようなポジションの作品ということなんでしょうかっ?!( ̄∀ ̄)

 『道端の花』が一般向けに初上映される1月28日は、日本における外国映画公開史に足跡を残す記念すべき日になるのかも知れません。
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by seochon | 2012-01-02 17:20